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連載|牧口じゅんのシネマフル・ライフ 第24回『旅するダンボール』|試写会にご招待!

2018年11月13日 - limeimei2

試写会に5組10名様をご招待!

連載|牧口じゅんのシネマフル・ライフ

第24回 愛と欲望と『旅するダンボール』

“アップサイクル”という言葉をご存じだろうか。世界で話題となっている考え方のひとつで、廃物をそのまま再利用するのではなく、それを用いて新たな商品を作り価値を高めることを指す。リサイクル、リユースとも違い、その上を行く、クリエイティビティをプラスさせた発想と言える。廃材で造られた家具、コーヒー豆の麻袋を利用したバッグなどが好例だろう。そういえば、映画『マジック・マイク』の主人公マイクが、飛行機の部品で造ったテーブルを販売する会社を立ち上げようとしていたが、これもまさに“Upcycling”だったというわけだ。持続可能な社会を考えるとき、3R(Reduce:削減、Reuse:再利用、Recycle:有効利用)が基本となるが、そこに近年加わってきたのがこの考えなのだ。そして今、“アップサイクル”を体現する人物として注目されているアーティストがいる。世界30ヵ国を旅してダンボールを集め、それを使って財布を作る島津冬樹だ。

Text by MAKIGUCHI June

ダンボールを愛した男の異色ドキュメンタリー

何ともエコな……と言いたいところだが、彼の創作の発端は、「ダンボールが好きだから」であり、財布作りは「ダンボールの良さを広めたい」というごくシンプルな感情から生まれたもので、エコもビジネスも関係ない。

島津の創作の原動力がエコロジーとかサステイナビリティといった現代的な発想からではなく、“愛”とか“欲望”といった実に原始的なものだということが、映画を観ていると良くわかる。もともと何かを好きになると集めてしまうタイプの子供だった。収集癖が消えることなく大人になった彼は、モノを入れては人々の手から手へと渡り、世界を旅するダンボールにロマンを感じ、ハートを射抜かれてしまったのだ。

連載|牧口じゅんのシネマフル・ライフ 第24回『旅するダンボール』|試写会にご招待!
連載|牧口じゅんのシネマフル・ライフ 第24回『旅するダンボール』|試写会にご招待!

誰かに数字を書かれ、誰かに蹴られ、誰かにつぶされたダンボールほど味や物語性があり魅力的だと彼は言う。だから、ダンボールを足で探すことを信条としている。その出会いさえ、彼にとってはドラマの一部であり、運命を感じさせる大切な儀式なのだろう。これまでに旅した国は30ヵ国。一番のお気に入りは、イスラエルで拾ったコカ・コーラの赤い箱だ。

あまりのリスペクトゆえ、お気に入りはそのままコレクションしてあるというが、そこが彼のダンボールへの“愛”の表出なのだとしたら、「ダンボールの素晴らしさを知ってもらいたい」という“欲望”の表出が財布作りなのだろう。

学生時代から、ダンボール財布を作っていたというが、周りからは失笑されていたようだ。それでも、愛と欲望を育み続けた彼は、美大に進み、大手広告代理店へと就職する。変わり者と思われていた彼を、より広い社会は“才能”として認めることができたのだ。とはいえ彼にとって会社組織は愛と欲望を貫くには、やや小さすぎた。クライアントを訪問する際に、面白いダンボールを見つければつい走って行って拾ってしまい、上司を困らせることもあったという。仕事より、上司よりも、気になるのはダンボール。やがて会社を離れた現在は、アーティストとして知られるようになる。作品である財布は、美術館のショップで売られるという名誉も手に入れた。とはいえ、アーティストとしての成功さえも彼にとっては「ダンボールに興味を持ってもらうきっかけ」くらいのことなのかもしれないが。

連載|牧口じゅんのシネマフル・ライフ 第24回『旅するダンボール』|試写会にご招待!
連載|牧口じゅんのシネマフル・ライフ 第24回『旅するダンボール』|試写会にご招待!

純粋な愛と純粋な欲望が重なれば、そこには喜びしか生まれない。彼の表情の何と活き活きしていることか。今では、「世界中の人にダンボールを愛してもらいたい」と、国内はもとより、アメリカや中国など海外でもワークショップを行っている。参加した人々が、自ら財布を作り、「かっこいい!」「ダンボールを見る目が変わった」「価値を再発見した」と目をキラキラさせている様子も映画には記録されているが、何より輝いていたのが、その様子を見ている島津の笑顔だったことは印象深い。

連載|牧口じゅんのシネマフル・ライフ 第24回『旅するダンボール』|試写会にご招待!

本編では、お礼参りよろしく、お気に入りダンボールの生みの親を訪ねて歩く様も追っている。その物語は可笑しくもあるが、感動的だ。そんな“思わぬ感動”に象徴されるように、ダンボールへの愛と欲望は、彼自身をも予想だにしない方向へと導き続けている。

彼の活動が“アップサイクル”であることは、偶然に過ぎない。だが、この素敵な偶然も、まさにダンボール愛と欲望が連れてきたもの。まだまだこの先も何か起こりそうな予感がしてしかたがない、島津冬樹×ダンボールなのである。


★★★★☆
アーティスト島津冬樹の素顔が魅力的。彼に洗脳され、ついダンボールに興味がわいてしまう。本人が描いたという、挿入されているアニメーションもキュート。

『旅するダンボール』
出演:島津冬樹
ナレーション:マイケル・キダ
監督・撮影・編集:岡島龍介
音楽:吉田大致
ロサンゼルスユニット撮影:サム・K・矢野
VFX:松元遼
プロデューサー:汐巻裕子
特別協賛:サクラパックス株式会社
2018年/日本/91分/英語・日本語/日本語字幕/カラー/DCP/ステレオ
インターナショナル版タイトル From All Corners
配給:ピクチャーズデプト
www.carton-movie.com
©2018 pictures dept. All Rights Reserved
12/7(金)YEBISU GARDEN CINEMA /新宿ピカデリーほか全国順次公開

< 試写会情報 >

公開直前の一般試写会に、OPENERS読者5組10名様をご招待!


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映画『旅するダンボール』試写会プレゼント
日時:11/20(火)18:30開場/19:00開映(上映時間91分)
会場:映画美学校試写室(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS B1F)


必要事項を明記の上、present@openers.jpまでご送付ください。
必要事項|①氏名(読み)/②年齢/③性別/④職業/⑤住所/⑥電話番号
抽選・当選通知|当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます
締め切り日2018年11月15日(木)24:00まで
※応募多数の場合は抽選とさせていただきます