メニュー

絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART

2018年12月7日 - limeimei2

ART|アートレーベル“Works & Words”の世界観を凝縮

アートと受け手を繋ぐ唯一無二な“一冊の作品”

デザイナー成澤豪氏によるアート活動レーベル「Works & Words」(ワークス&ワーズ)が生み出した、絵本のスタイルを採用したアートブック『A BOOK 』。シンプルな言葉によって紡がれたストーリーが、淡い紙版画によるプリントとあいまって、心に静かに染みわたる。

Text by WASEDA Kosaku(OPENERS)

テーマは“しずかな こえ”

デザイン会社「なかよし図工室」代表である成澤豪氏個人によるアート活動レーベル「Works & Words」。何気ない日常の一瞬に見出す、ささやかな喜びを表現した作品を発表している。

氏が「Works & Words」で発表してきた作品の表現方法、モチーフ、世界観を活かしながらも、新しいテーマに取り組んだのが『A BOOK』である。絵と言葉を組み合わせ、“絵本のように”進行する新しい試みだ。

“しずかな こえ”というテーマで制作した紙版画作品群を原画とし、短くシンプルなストーリーが、紙面の余白を介して呼応し合いながら進行していく。

絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART

いままでにない創作の出発点について、成澤氏に伺った。「アート活動で生まれる作品は1点のみであることがほとんどです。生み出した作品がもっと多くの方とのご縁を得ることができないかと考えてきました。かと言って、試行錯誤の上でたどり着いた“作品”を“複製”するということには、少し抵抗があります。そこで思い至ったのが絵本というスタイルを採った『1冊の作品』を作ることだったのです。」

『A BOOK』に収録されている、ていねいに綴られた言葉とやわらかな色彩の絵は読む人の心にそっと染み入る。

「絵本というスタイルをアート作品の形状として採用することで、“複製”への抵抗を払拭できたことが大きな発見でした。また、壁にある絵を距離を保って見つめるという行為に比べ、手に取りページをめくるという行動は、いっそう作品と鑑賞者の距離を心理的に縮めるものでもありました。」と成澤氏。たしかに、心に自然と入ってくる感覚は、絵本というスタイルだからこそかもしれない。

末永く読んでもらうための“技”と“こだわり”

製本には、職人の技が息づいてる。末永く所有して、読んでもらいたいという想いから、表面はすべてクロスライクペーパーによる上製本に。心地よい手触りと、頑丈さを両立させている。加えて背部分には布クロスを張り付ける背継表紙という古典的な方法で、強度アップが図られた。ページの導入部分には、非日常な気分を誘いたいという狙いから、極薄の紙によるページを組み込んでいる。

それらをまとめあげ、制作し続けるには製本職人の存在と、技と知恵が不可欠だという。

絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART
絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART

中身は優しい色合いと紙の表面が織り成す“カスレ”のような独特のマチエールが魅力的な紙版画によるもの。このマチエールは、紙自体の色や同系色の淡い色で構成されている。この原画は、光などの原画を見る環境によって印象が変わりやすい。プリンティングディレクターと何度も打ち合わせを得て、原寸サイズで配することで、淡い色彩ながらも存在感のある画が出来上がった。

また、物語を伝える部分の文字は、和・欧ともに作品の世界観に合わせてオリジナルの書体を制作。読み手と物語の間を繋ぎとめ、決して邪魔をしない。シンプルでしなやかな文字が紙面に収まる。

絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART

読む人の心にそっと寄り添う言葉と絵。創作のヒントの一つは、“幸せな気持ちとなれるタネを見つけること”と成澤氏はいう。

「毎日の中で悲しいことも、嬉しいこととも、なんとも思わないようなことも、いろいろなものが混ざり合い、日々を過ごすわけです。そのなかで、自分が特に幸せな感覚になれる事象は何なのか、なぜ良いと感じたのかを反芻します。その時間が結果として創作のインスピレーションや、具体的なイメージとなって精錬されていきます。やがてそれが、幸せな気持ちとなれるタネ(理由)となり、そんなタネを蒔いた畑のように作品が生まれることで、鑑賞者がこちらが思いもよらないような発見、喜び、幸せを感じ、見出し、収穫してもらえることが、私の願いなのです。」

絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART
絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART
絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART

成澤氏は、第2、第3の『A BOOK』も計画している。絵の表現技法や、ストーリー、またそれに伴う判型や製本スタイルも、テーマによって変える必要もある。

しかし、今後も“幸せな気持ちとなれるタネを見つけること”と、鑑賞者と作品の距離を縮めるという考え方は変わらない。A BOOKという表現のためのプラットフォームを駆使しながら、また違った“1冊の作品”を作っていきたい、と成澤氏は語った。

絵本のようなアートブック『A BOOK』|ART

A BOOK 〜しずかな こえ〜
絵・文|成澤豪
サイズ|A4サイズ横(H217mm×W302mm×D10mm)
重量|約430g
仕様|背を布クロスとした継表紙、表紙タイトル箔押加工、見返し、別丁、オフセットカラー印刷、全32ページ、和・英バイリンガル表記
価格|3500円
取扱店舗|Works & Words公式オンラインショップ(https://www.narisawago.com/shop/)